◆就労ビザの要件◆
就労系の在留資格を取得する際、その種類によって要件が定められています
ここでは、最も一般的な就労ビザである【技術・人文知識・国際業務】、【高度専門職】及び【特定活動(本邦大学卒業者)】の在留資格についての要件をご紹介していきます。
その他の就労系在留資格の取得要件については、別途お問い合わせください。
◆「技術・人文知識・国際業務」ビザの取得要件について◆
「技術・人文知識・国際業務」の在留資格は、その実際に従事する業務によって、学歴または職歴(実務経験)要件が異なっているため、注意が必要です。
※複数の業務にまたがって従事する場合、原則として、全ての業務に関する要件を満たす必要があります。
※■要件2■以降については、「技術・人文知識・国際業務」に該当する業務に共通の要件となります。
-----------------------------------------------------------------------------
■要件1■ 学歴または職歴(職務経験)
【ITエンジニア、技術者、設計者等の技術職に従事する場合】
「理工」「工学」等の自然科学分野に該当するような業務(例:ITエンジニアや技術者、設計者等)に従事する場合は、
下記の学歴・職歴・資格保有のいずれかの要件を満たしている必要があります。
☑学歴
これから従事する予定の業務に関連がある専門分野を専攻して大学等(※)を卒業していること。
※大学等には、短期大学、大学院、専門士を取得できる専門学校も含まれます。
また、ここでいう大学には、日本に限らず、日本の学校教育法に基づく大学、短期大学にあたる海外の大学も含まれます。
☑職歴(実務経験)
これから従事する予定の業務について、10年以上の実務経験(※)があること。
※10年以上の実務経験には、大学等における当該技術や知識に関連する科目を専攻した期間を含みます。
☑情報処理技術に関する試験の合格または資格の保有
申請人が、情報処理に関する技術または知識を必要とする業務に従事しようとする場合、
<法務大臣が告示をもって定める情報処理技術に関する試験に合格>、または、
<法務大臣が告示をもって定める情報処理技術に関する資格を保有>していること。
つまり、情報処理に関する技術または知識を必要とする業務に従事しようとする場合には、学歴・職歴がなくても、指定された資格を保有していれば、【技術・人文知識・国際業務】の在留資格を取得できるといえます。
【法務、経理、人事、総務等の人文知識に関する業務に従事する場合】
「法律学」、「経済学」、「社会学」、「文学」、「商学」、「経営学」等の人文科学分野に該当するような業務(例:法務や経理、人事、総務等)に従事する場合は、
下記の学歴・職歴のいずれかの要件を満たしている必要があります。
☑学歴
これから従事する予定の業務に関連がある専門分野を専攻して大学等(※)を卒業していること。
※大学等には、短期大学、大学院、専門士を取得できる専門学校も含まれます。
また、ここでいう大学には、日本に限らず、日本の学校教育法に基づく大学、短期大学にあたる本国の大学も含まれます。
☑職歴(実務経験)
これから従事する予定の業務について、10年以上の実務経験(※)があること。
※10年以上の実務経験には、大学等における当該技術や知識に関連する科目を専攻した期間を含みます。
【通訳、翻訳、語学指導等の国際業務に従事する場合】
”外国の文化に基盤を有する思考もしくは感受性”を必要とする業務のうち、
通訳、翻訳、語学指導等の業務に従事する場合は、
下記の学歴・職歴のいずれかの要件を満たしている必要があります。
☑学歴
大学等(※)を卒業していること。(専攻・専門分野は特に問われません)
※大学等には、短期大学、大学院も含まれます。
また、ここでいう大学には、日本に限らず、日本の学校教育法に基づく大学、短期大学にあたる本国の大学も含まれます。
☑職歴(実務経験)
これから従事する予定の業務について、3年以上の実務経験があること。
【広報、宣伝、海外取引業務、デザイナー、商品開発等の国際業務に従事する場合】
”外国の文化に基盤を有する思考もしくは感受性”を必要とする業務のうち、
広報や宣伝、海外取引業務やデザイナー、商品開発などの業務に従事する場合、
下記の職歴要件を満たしている必要があります。
☑職歴(実務経験)
これから従事する予定の業務について、3年以上の実務経験があること。
ただし、その内容によっては、「国際業務」ではなく「人文知識」として扱われる可能性があります。
-----------------------------------------------------------------------------
■要件2■ 日本人と同等以上の報酬を受け取ること
報酬額の目安は、地域や業界、業務内容によっても変わりますが、目安としては月額18万円以上といわれています。
しかし、外国人の方がこれから勤める予定の会社の同業界における日本人の平均報酬額が月額18万円未満である場合には、それを証明することで、月額18万円以上でなくても許可が下りる可能性はあります。
-----------------------------------------------------------------------------
■要件3■ 勤務先会社(招聘機関)の安定性・継続性があること
外国人従業員に報酬を十分支払えるほど、会社(招聘機関)の経営が安定しており、かつ、今後もその安定性の継続が見込まれることが必要です。
このように書くと、新しく設立したばかりの会社では、【技術・人文知識・国際業務】の在留資格で従業員を雇用することが非常に難しく思えますが、今後の事業についてしっかりと説明できれば、ビザ取得の可能性は十分にあります。
-----------------------------------------------------------------------------
■要件4■ その他の要件
上記1~3の要件を全て満たしていれば、必ずしも【技術・人文知識・国際業務】の在留資格が取得できるわけではありません。
上記以外にも
・十分な仕事量があること
・適切な勤務場所、事務所が確保されていること
・素行不良でないこと
が、審査の際には重視されます。
◆注意事項◆
◆転職する場合
転職先の業務が、現在の在留資格の範囲内の業務である場合
→在留資格の残存期間によって、「就労資格証明書交付申請」を行うことをお勧めします。
転職先の業務が、現在の在留資格の範囲外の業務である場合
→在留資格変更許可申請を行う必要があります。また、変更後の在留資格の要件を満たしている必要があります。
更に、転職により、勤務先が変更されます。その場合は、”契約機関に関する届出”を提出する必要があります。
この届出が遅れたりを怠ったりすると、以後の審査で不利に働くことがあります。
◆「高度専門職」ビザの取得要件について◆
高度専門職ビザは就労ビザの一つで、「高度研究活動」「高度専門・技術活動」「高度経営管理活動」の3つに分類されます。
自分が従事する業務がどの分野に属するかにより、該当分野のポイント計算を行い、70ポイントを取得できれば「高度専門職」の在留資格を得ることができます。
◆「特別高度人材制度(J-Skip)」について◆
「J-Skip」は、2023年4月から運用が開始された、高度人材に関する新しい制度です。
「高度専門職」ビザが、ポイント計算表において70点以上を取得する必要があったことに対し、
「J-Skip」はポイント計算の必要がありません。
「J-Skip」を利用できるのは、「高度専門職」の3分類(高度学術研究活動、高度専門・技術活動、高度経営管理活動)のうち、いずれかに該当する場合で、
(1)高度学術研究活動、高度専門・技術活動に該当する場合
①修士号取得以上の学歴+年収2000万円以上
②実務経験5年以上+年収2000万円以上
(2)高度経営管理活動に該当する場合
実務経験5年以上+年収4000万円以上
の条件を満たすことで、「特別高度人材」と認定されます。
※上記の実務経験には、日本国外におけるものも含まれます。
◆メリット◆
「高度専門職ビザ(1号)」の最大のメリットは、優遇措置です。
- 複合的な在留活動の許可
- 在留期間一律「5年」の付与
「高度専門職」の在留資格は、一律「5年」の在留期間が付与されます。
配偶者やお子さんが「家族滞在」の在留資格を取得する場合、扶養者である「高度専門職」の方の在留期間と同等の期間が付与されるため、
同時に入国される場合は、やはり「5年」の在留期間が付与される可能性が高いです。
※但し、婚姻歴が短い等の事情がある場合は「5年」とならないこともあります。 - 在留歴に係る永住許可要件の緩和
一般的な条件で永住許可申請を行う場合、10年以上の在留期間(うち5年以上が就労関係の在留資格での在留)が必要となりますが、
「高度専門職」の場合、70ポイント以上であれば最短3年、80ポイント以上であれば最短1年で永住許可申請ができます。
また、「特別高度人材」の場合は、最短1年で永住許可申請ができます。 - 配偶者の就労OK
「高度専門職」の配偶者の方が就労(フルタイム同等)を希望される場合、「技術・人文知識・国際業務」等に該当する業務に従事するのであれば、
「技術・人文知識・国際業務」等の要件を満たさなくても、「特定活動」の在留資格が付与され、就労することができます。
なお、「家族滞在」ビザをお持ちで、パートタイムやアルバイト等で短時間勤務を行う場合は、「資格外活動許可」を取得することで、
「資格外活動許可」の範囲内(週28時間以内)での就労が可能です。 - 一定条件下での親の帯同OK
年収や同居等の要件を満たすことで、「高度人材」本人または配偶者の親を帯同することができます。 - 一定条件下での家事使用人の雇用OK
一定条件を満たすことで、家事使用人を雇用することができます。 - 大規模空港等でのプライオリティレーンの使用可
- 入国・在留手続きの優先処理
他の在留資格に比べて、比較的短い期間で在留資格認定証明書交付申請、在留期間更新、在留資格変更許可申請の審査が行われます。
ただし、永住許可申請については、特に優先処理の優遇措置はありません。
「高度専門職(2号)」には、上記3~8に加え、下記優遇措置が追加されます。
9.ほぼすべての在留資格に関する活動ができる。
「高度専門職」としての活動に加え、ほぼすべての就労系のビザに定められている活動を行うことができます。
10.在留期限が「無期限」となる。
「無期限」とはなりますが、「永住許可」とは異なります。
更に、「特別高度人材」は、上記1~8の優遇措置に加えて、下記優遇措置も追加されています。
①世帯年収が3000万円以上の場合、外国人の家事使用人を2名まで雇用できる
② 配偶者が就労する場合、従事できる業務の範囲が広がる
③入国後1年で、高度専門職2号に変更可能
→上記9~10の優遇措置も適用される
◆注意事項◆
◆転職する場合
「技術・人文知識・国際業務」等のビザが、転職後の業務内容が同じであればそのまま転職することができるのに対し、「高度専門職」は所属機関等が変われば、再度「高度専門職」を取得するために「在留資格変更許可申請」を行う必要があります。
◆複数機関に所属する場合
複数機関に所属する場合、年収の部分については複数機関の年収を合算することができますが、申請の際には複数機関すべてについて許可を得る必要があります。
例えば、現在A社との契約で「高度専門職」ビザを持っていて、今後A社+B社との契約に基づいて「高度専門職」の活動を行う場合、
A社+B社の2社で活動を行うとして、「在留資格変更許可申請」を行い、指定書に2社両方の企業名を記載してもらう必要があります。
これは、1社→2社となる場合に加え、2社→1社となる場合にも、同様の手続きが必要となります。
◆「特定活動(本邦大学卒業者)」ビザの取得要件について◆
この特定活動(本邦大学卒業者)ビザは、2019年5月に新設されました。
このビザにより、一定の条件を満たせば、これまで許可されなかった”現場”での業務に従事することが可能となります。
■要件1■ 学歴
本邦、つまり日本の大学や大学院の課程を卒業又は修了している必要があります。
短期大学や専門学校、国外の大学等を卒業している場合は、その対象とはなりません。
■要件2■ 日本語能力
以下のいずれかの要件を満たしている必要があります。
(1)日本語能力試験N1取得、又はBJTビジネス日本語能力テスト480点以上
(2)大学などにおいて「日本語」を専攻して卒業・修了した方
(3)外国の大学等において「日本語」を専攻した方
※但し、併せて日本の大学等(学科や専攻は問いません)を卒業・修了している必要があります。
短期大学や専門学校、国外の大学等を卒業している場合は、その対象とはなりません。
■要件3■ 常勤であること
正社員、契約社員、フルタイムパート、業務委託等の雇用形態は問いませんが、 常勤の従業員として雇用される必要があります。
■要件4■ 契約機関の業務に従事すること
「技術・人文知識・国際業務」の在留資格の場合、派遣社員として派遣会社に登録し、派遣先で勤務することが可能です。 しかし、「特定活動(本邦大学卒業者)」の在留資格の場合は、契約機関の業務に従事する活動のみが認められているため、 契約機関以外での業務に従事することはできません。
■要件5■ 日本人と同等以上の報酬を受け取ること
報酬額の目安は、地域や業界、業務内容によっても変わりますが、目安としては月額18万円以上といわれています。
しかし、外国人の方がこれから勤める予定の会社の同業界における日本人の平均報酬額が月額18万円未満である場合には、それを証明することで、月額18万円以上でなくても許可が下りる可能性はあります。